「想定外」という言葉・・・
素敵ですね。
我が社も、こんな素敵な言葉を使いこなしたいです。
予想できる範疇で対処をしていれば
その予想を上回る出来事が起きて人の命に係わったとしても
「想定外」と高をくくれば済んでしまう。
なんとも魔法のような言葉です。
責任をすべて回避できる奇跡の言葉です。
社会は、すべてが想定よって築かれています。
現代社会を構築する「法律」も
すべてが想定に基づき決められています。
たとえば、家を建てる時の規制となる「建築基準法」は
震度6強~7程度の地震で倒壊や崩壊しない水準
とされています。
これがいわゆる新耐震基準といわれるものです。
1981年5月までの旧耐震基準では、震度5強程度でした。
つまり、旧耐震基準では震度5超以上は来ないという想定であり
新耐震基準では震度7以上は来ないという想定に基づいた法律となります。
原発も様々な公共施設も、この想定に基づいて建てられています。
1995年阪神淡路地方で震度7.2の地震が発生。
10万棟の建物が全壊し、その他15万棟の建物が半壊。
道路が沈下し公共施設が倒壊し、高速道路が倒れ
多くの命が失われ
消防設備が機能せず大火災が起きました。
この時あたりから「想定外」という言葉を
良く聞くようになったと記憶しています。
この大惨事に・・・
「今までの常識の想定を超えた地震」
「都市計画の想定外の地震」
として、国土交通省の誰一人として責任を負いませんでした。
直後、建築基準法が改正され、接合金物が義務化。
さらに、地盤調査を行わないと建物を建てられないよう改正。
震災以前、地盤補強なんて木造2階建では珍しい代物で
ほとんどの住宅は、地盤調査すらしていませんでした。
この建築基準法の改正で
霞が関は「これで大丈夫」と想定した訳です。
その数年後、マンションや住宅の耐震偽造が発覚。
日本全国で偽造マンション・偽造住宅が大問題になりました。
構造計算の偽造を、審査機関は全く見抜けず
検査機関の現場検査が全く無意味だということが露呈したのです。
この時も「想定外」という言葉が飛び交いました。
あわてて、国は、さらに建築基準法を改正。
一定の高さ以上等の建築物いついて「構造計算審査」が義務付けされ
建築確認・検査が厳格化されました。
また、建設業法、建築士法、宅地建物取引業法も改正され
建築士等の業務違反行為に対する罰則が強化。
そして、国は「これで大丈夫」とした直後・・・
六会生コンクリート偽造事件が発覚。
JIS印のスラグ入りの違法コンクリートが出回り
神奈川県内の300件に強度不足のマンションや住宅が発生。
鎌倉の大仏トンネルにも使われて大騒ぎとなりました。
この時も「認可したコンクリート製造会社が偽造するなんて想定外」として
認可し監督責任のある国土交通省は一切の責任を負いませんでした。
そして、現在に至ります。
先日、建築士を騙り・・・
無資格者が木造住宅の設計を行い
おおよそ50件がすでに完成しているというニュースがありました。
驚くことに、建築確認の申請も行い
設計検査をすべてスリ抜け
行政から許可を受け、現場管理も請け負い
中間の検査もすんなり通り、完了検査に合格していたというのです。
この異常事態も、監督責任のある国から言わせると
「想定外」なのでしょう。(失笑)
しかし、事件後、システムの不備を問題とせず
そして、そのシステムを管理する誰も責任を負わず
責任の所在があやふやのまま、また沈静化する不思議。
素敵だ。
何度同じ過ちを繰り返しても
何事もなく済ませてくれる魔法の言葉。
この後、まるで「法律が悪かった」と言わんがばかりに
一部法改正して終わりです。
今の社会は、何事もこの有様です。
国がこうなると、企業も追随します。
想定は任意ですから、その壁の高さは自分のさじ加減です。
原発がその最たるもので・・・
国と電力会社が有識者会議を開き
その有識者なるものが「想定」した基準以上であれば
老朽化した原子力発電所がつぎつぎに再稼働してしまう。
でも、その想定が誤っていて、将来覆っても・・・
「当時の常識では想定できなかった」として
誰一人として責任を負わず
福島原発の事故で放射能を世界にまき散らして
手におえない今になって尚
裁判所も「原子力規制委員会の想定は安全」として、物事を進める。
本当に魔法にかけられたようです。
ぜひ、我が社も、なにかあったらこの魔法を使いたい。
住宅業界でも、事故は間々おきます。
トラブルで一番多いのは雨漏りです。
ビルダーは、建てた家で雨が漏る事など一切想定していません。
つまり、漏った時点で想定外なんです。(笑)
だから「想定外」などという言い訳は、通じません。
ちなみに、お客様からのクレームも想定なんてしていません。
クレームとなった時点で、すべて想定外ですもん。(失笑)
よって、政治家や国・地方団体・大手企業が何か事あるごとに
「想定外」と悪びれず口にし責任を回避する報道を見るたびに
本当にうらやましく思うのです。
震災前の東京電力の経営陣裁判が現在行われています。
そこで断罪されている会長も社長も副社長も
裁判の中で皆口をそろえ「想定外だった」と主張。
さらに、東京電力のTOPだった勝俣恒久被告は
「社長の権限は無かった。」
「津波対策の権限は本部に付与していた。」
「全部私が見るのは不可能に近い。」
「説明は無かったんじゃないかと思います。」
「原子力本部で考えたのではないか。」
と、自分の経営者としての責任を一切否定。
「想定外」という主張の元、現場が悪かったと言い切ったのです。
いいな~、羨ましいな~。
当社の住宅で雨漏りが発生して、お客様が怒って当社に来た時
「私は現場の事は知らない。全部、社員に任せていたから。」
「造った大工が手を抜いたのではないか。」
「私が見るのは、不可能に近い。」
と言って、社長を辞めて逃げるのと同じです。
ふつう、そんな会社ありえませんね。
極悪ですよ。
私がそんな事をしたら、会社の評判がすぐに落ちて潰れるでしょう。
マネしたくても、絶対にできないのです。
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