鎌倉市は、その昔
居住区がとても少なく
市内のほとんどが緑地だったそうです。
昭和40年代に多くの山が切り崩され
いたる所で大規模開発がされ
今の各地域の街が形成されています。
小さな山が重なり合い
その谷間に川が流れていた場所を
切り崩し、擁壁を作り、埋め立てて・・・
「よくもまあ、こんなところを造成したな」
という場所ばかりです。
当時は、財閥系のゼネコンが
こぞって鎌倉を分譲し
100区画を超えるような造成も
飛ぶように売れたそうです。
先日も当社が買い取った土地にて
元所有者のご老人が
当時の事をこう言っていました。
「ここの分譲地は3期に分かれて販売されたんだ」
「でも、すべて販売当日に全区画が完売したんだよ。」
当時は、山林は二束三文だったことでしょう。
金をかけて造成すれば
100倍以上のお金に化けるのであれば
浄明寺や二階堂にある
凄まじい造成地も
納得する事が出来るのです。
当時、古都という景観を守るため
開発造成に自然石が多く使われているのも特徴です。
「玉石擁壁」や「大谷石擁壁」です。
この自然石が・・・
現在、とても厄介者となっています。
特に「大谷石」の擁壁は
築40年も経つと
表面の風化が始まり
ボロボロと表面がはがれているものが
とても多く、我々を悩ませます。
その昔、景観を守るために
多く使われた自然石が
今では、鎌倉の景観を落としている
原因となっている訳です。
本来であれば・・・
単純に造り変えてしまえばよいのですが
そう簡単ではありません。
取り壊すだけで、数十万円かかり
新しく擁壁を組みなおすとなると
数百万円~数千万円の
大工事となる事もさることながら
鎌倉は、規制がとても多く
日本有数の厳しさで
許可と調査が重なり
物凄い時間を要することとなります。
先日、当社が手掛けた
常盤の旧分譲地の一画。
こんな形状で古屋が建っていました。
白く見えているとことが
風化して表面がはがれている部分です。
設計を依頼して
現地を見た建築家の伊藤先生は
「丸く切り出していて、美しい大谷石」
「このままにしておきたいですね」
と、おっしゃられました。
確かに大谷石の風合いが出て
自然美を感じます。
古屋の解体をして
新築住宅を着工。
4カ月後、外装がすべて完成し
足場を外し、外部シートを取り除きます。
擁壁だけだと「風化の美学」とでも言いましょうか?
古さが美しく見えるのですが
新しい家が対比として存在してしまうと
やはり、痛みがとても目立ってしまいます。
玉石や間地擁壁であれば
『洗浄』という手段があるのですが
大谷石は、高圧洗浄すると
表面が限りなく剥がれてしまうので
洗う事は出来ません・。
凹凸が激しく、綺麗には絶対になりません。
ということで・・・
建物の外壁と同じように
モルタルで仕上げることとしました。
つづく