2017年10月16日月曜日

梶原地区住民協定廃止

鎌倉市には、自主協定というものがあります。
種別として・・・

①建築協定(住民規模)
②住民協定(町内会規模)
③自主まちづくり計画(区域規模)

の3種類です。
主に「敷地の分割」や「用途」を制限するのを目的としており
都市計画や用途地域、その他行政が規制する基準以外に
住民が自ら、より厳しい制限を規すことが出来るのができ
鎌倉で大規模宅地開発が行われた昭和中期に制定されたものが多いのが特徴です。

その中で、比較的新しいのが「自主まちづくり計画」です。
まちづくり計画なので規模も大きく、現在、14か所確認されています。
鎌倉市役所で開示されている図では・・・



(画像は鎌倉市より※クリックすると拡大します。)

この赤枠が自主計画地区となっています。
さらにこの赤枠以外に、建築協定が18か所。
さらに、住民協定は77か所にも及びます。

これら「協定」は、法律ではありませんので
守らなくても、罰則はありません。
遵守するか否かは「所有者」及び「事業者」にゆだねられており
建築基準法にもリンクはしていないため
協定を一切無視して、宅地分譲が強硬するケースも見受けられます。
(新興業者などが良くやる)

ただし、そうした場合・・・
強行して分譲された住宅や土地に将来住むお客様(個人)は
その地域、自治会、町内会、区域内で「違反者」とみなされ
肩身の狭い思いをする可能性が高く・・・

我々のようなお客様側に立つ地場ビルダーや地場工務店は
無視することは絶対に出来ません。

酷い建売住宅が乱立する湘南地域。
古都鎌倉も例外ではありません。
それを未然に防ぐには、これら協定は強力な抑止力となります。
ただ、この建築協定や住民協定は、もろ刃の剣でもるのです。
環境を守るために、土地の分割等を規制する代わりに
その地域の地価の低下や空き家化を招くこととなります。

現在、鎌倉市は住宅地の老朽化と居住者の高齢化という
深刻な問題を抱えています。
その中でも、特に進捗が早い区域に、この協定が多く存在しているのです。

昭和中期に大規模造成された区域は、一区画の面積が80~100坪です。
山を切り崩し、傾斜地を造成したところがほとんどなので
皆、擁壁を介してその上に家が建っています。
当時、造成に使われていた擁壁は「大谷石」や「割石」や「玉石」です。
現在の建築基準法では、認められていないものとなります。

家ばかりの老朽化だけではなく・・・
造成地の老朽化も進んでおり、古い擁壁も建て替えの対象となります。

当時は、高度経済成長期なので、
土地は、バンバン売れました。その状況で、居住者は不安になります。
「どんどんと乱開発がされていくのではないか?」
「綺麗なこの自分の居住地の環境が失われるのでは?」

そこで、地域住民が話し合い、住民協定を作った訳です。

ただ、一度制定されると、内容はほぼ形を変えることなく
その協定だけが残りつづけます。
10年経ち20年経ち、住宅地はどんどんと歳を取りますが
協定の文面だけは、制定当時の内容を保持し続ける。

そのギャップが、今鎌倉を苦しめているのです。

普通であれば、100坪の土地を2区画~3区画に分割し
擁壁を造り直し、30~50坪ずつにして販売すれば、若い世代でも買う事が出来ます。

でも、住民協定は分割を禁止するため
100坪の土地を100坪で再利用しなければなりません。
そうなると、土地単価70万円で扱うと

30坪=2100万円
100坪=7000万円

家を求める若い人たちの年収は、400万円~600万円の層です。
7000万円の土地を買って、家を建てる資力は持ち合わせていません。

するとどうなるか?
①地価が下がる。
②売れない
③古屋が残る
④空き家になる
⑤町がどんどんと経年劣化していく
⑥庭木も荒れて環境が悪化し、景観が失われていく
⑦さらに価格が下がる

まさに、悪循環です。

上記のようなスパイラルを生んでいる住宅地として

今泉区域
城廻区域
西鎌倉区域
梶原区域
二階堂区域
七里ヶ浜東

が上げられます。

その中の一つ、梶原地域に異変がありました。



梶原地域には、大きな自主まちづくり計画の中に
5つの住民協定と建築協定が存在していました。

ようは、行政・自主まちづくり・自主協定の3重規制です。
それが今年の9月、住民協定と建築協定が一気に廃止されたのです。

私も全く知らなかった。
たぶん、同業者も知っている人は居ないと思います。
先日、市役所の建築審査課の窓口で、台帳を閲覧して初めて知ったのです。
台帳は、まだ直されておらず、こんな張り紙での周知です。(^^;)


これは、素晴らしいことだと思います。

これにより、梶原地域のより良い発展が望まれます。
古い協定を破棄し、若い世代・新しい世代のために町を残す。
それが、今、古都鎌倉に求められている事のように考えます。

もっと言えば・・・
行政が率先して住民に寄り添い、手伝いを行うべきだと思うのです。
住民は、素人集団です。
地域ごとの広い展望は、出来ません。

鎌倉市には都市の計画や調整を行う課があります。
環境を守る課も多数あります。
人員削減ばかりを行うのではなく、代替わりで相続が増える今、時代の節目として、新たな街づくりにチャレンジするために、優秀なブレーンを全国から集めるべきだと思うのです。

老朽化し、経年劣化した大規模住宅地に対し
鎌倉市として強くアプローチすればいい。
そこで、どこかの企業と組んで、再区画整理などを行うぐらいの気概を・・・
新しい市長には持ってもらいたいです。

お金になる観光ばかりに目をやるのは、止めましょう。
ほっといても、来るんだから。

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