この「建売業界」に身を置いていると・・・
間取りに関して、お約束というものが存在します。
4LDK
1Fはリビングと和室
2階は6帖3部屋
切って貼ったかのような、間取り図。
注文住宅とは違い・・・
建売住宅は不特定多数の方を対象に建てるため
お客のウケを狙います。
何が最も受けるか?
それは何故か「部屋数」なんです。
3人家族の場合でも、多くが3LDKより4LDKが欲しいと言います。
夫婦の主寝室に、子供部屋。
もう一人生まれた時のために、もう一つ子供部屋。
あとは、お客様が泊まりに来た時のお部屋。
この考え方が圧倒的に多い。
よって、ビルダーは90㎡の小さな家でも4LDKにします。
無理くりですが、その方が売れる。
無理があるから、家としての無駄なスペースが一切なくなる。
(収納・パントリー・玄関収納・ホール等)
逆に部屋の中に収納を設けなければならなくなるので
動線が遮られ、使い勝手が悪くなるのですが
買う側は、素人ですから実際住んでみないと解りません。
居室の間仕切りでギッチギチなので・・・
限りなくオーソドックスな家が出来上がります。
また、建売住宅は完成前に広告で販売をします。
よって、いかに「広告映えするか」が重要とされています。
ビルダーとして住みやすいかどうかは、あまり関係ないようです。
また、代わり映えしない住宅ばかりなのは・・・
建売業界の現状に理由があります。
現在、建売業界のシェアの90%をパワービルダーが握っています。
パワービルダーは、住宅を量産することで低価格化を実現しているため
個々に設計を行うことは、あまりしません。
既成物の「同じ形・同じ仕様」の家を造り続けます。
よって、その土地の風通しや日当たりや近隣状況などは鑑みず
内部も外観も全く同じ家がどんどんと建てていく。
住宅のベルトコンベアー方式です。
だから、窓を開けたら「隣の壁」なんて、珍しくもありません。
私、同じビルダーとして、最近つくづく思います。
「4LDKって、必要ですか?」
「オーソドックスって、有益ですか?」
なんだか、住宅の理念って、皆さん凝り固まってますよね。
ビルダーもお客様も設計事務所も。
建築家の伊藤先生とも、よく話しますが・・・
『4つも5つも細かく壁で区分けした家って、一戸建てなんですかね?』
一戸建ては、一つの空間であって家族が一つになるもの。
だけど、家の中で一人一人を壁とドアで遮ってしまうのは
家族を別離する考え方であって
それが家庭内別居なる事態を招くのではないか?
子供に一人一部屋を与えるという西洋的な考え方が
日本の文化を壊してきたのではないか?
そこまで、個人的に思うのです。
今の住宅間取りの常識は、間違ってるなぁ~。
住宅の販売広告を見るたびに、首をかしげるのです。
そんな話の中、伊藤先生が教えてくれました。
伊藤先生が最近、細部にわたりすべてを手掛けた家。
「横須賀の家」
http://www.chilchinbito-hiroba.jp/column/URA/106
(URA地域主義建築家連合のHP)
雑誌「チルチンびと92」でも紹介されています。
この家が、なんとも魅力的なのです。
3人家族で、間取りは2LDKですが・・・
感覚的には1LDK+広間です。
2階は、吹き抜けと、空間をぶち抜いた14帖の和室だけ。
1階は、和室が一つあり、あとは水回りとリビング。
玄関を入ると、土間がリビングまでつながっています。
その土間の一角にキッチン。
古き良き日本家屋で見た「土間キッチン」です。
そして、家をぐるっと囲む濡れ縁。
なにが凄いかって・・・家が、『ひとつ』になってるのです。
家が『ひとつ』ということは、家族が『ひとつ』ということ。
4人5人が家の中に居ても・・・
誰がどこにいるか、気配で感じる家。
なんだか、良い。
家族が個々の部屋にこもって出てこない家なんて
すでに、一戸建てじゃないですね。
家庭内別居なんて言葉が出来るぐらいですから。(^^;)
こんな空間の家を建てたいな。
というか、住んでみたいな~。
なんでも、雑誌には「エアコンも無し」と書いてある。
そんなところも建築家の技ですね。
風通しも設計でコントロールできるのです。
こんな話をしてみると、凄い独創的に聞こえていそうですが・・・
でも、実は、珍しくもなんともなく・・・
伊藤先生の手掛けた家は、日本の昔の家なんですよ。
古き良き日本にあった形を伊藤先生が自分なりにアレンジしただけ。
雑誌では「旅籠の家」と紹介されています。
はたごと読みます。
江戸時代にあった旅籠は、広い畳の一部屋を障子や襖で分けて泊まるだけの空間だったそうです。
こんな家を、建売住宅で手掛けてみたい!!
お金は、パワービルダーの造る家の3倍ぐらいかな?
でも、それ以上の価値はあると思うし
鎌倉という土地では、似合いませんか?
近いうちに伊藤さんを酒に誘ってみようかしら。
相談しなければ。(^^)
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