2017年3月11日土曜日

夢を聞くのは楽しい

人の見る夢を聞くのは、とても楽しい。

我々のような設計事務所やハウスビルダーは・・・
まず最初に「お客様の夢」を聞くのが仕事です。

様々な夢。
その夢が壮大であればあるほど、聞き手は楽しいのです。
お客様と「ワイワイ」「キャッキャ」言いながら、打ち合わせます。
夢を共有する瞬間が、ビルダーとして喜びのマックスです。

その夢を受け取った瞬間、現実に引き戻されます。(苦笑)

まず最初にしなければならないのが、積算です。
積算を正確に出すには、数十人いる職人すべてに見積もりを依頼します。

地盤補強
基礎
足場
仮設トイレ
仮設ゲート
材木店
大工
セルローズファイバー
サッシ
建具
水回り設備
床材
板金
サイディング
左官
ペンキ
電気
電気設備
水道
ガス
防水
防虫防蟻
外構
植栽
廃材処分

これ、全部異なる職人さんで、別々の見積もりとなります。
ですが、実際、皆さん忙しく働いています。
すべての方たちに連絡を取って、実際に建てるかどうか解らない家に対し
細かい打ち合わせをするのは不可能です。

よって、私が一通り想定概算をすることとなります。

今まで積み上げてきたデーターがあるので
そのデータとにらめっこをしながら、頭を悩ませます。
この業界、すべては経験です。
経験が無ければ、積算すらまともにできないのです。

でも・・・
資材価格は、年々変わります。
商品も次々に廃盤になり、ドンドンと新しくなっていきます。
日々、勉強をしていないと、あっという間に浦島太郎。
大変です。

なにをかくそう、私の一番嫌いな仕事は、金の計算なんです。
嫌いな金の算段が永遠と続きます。

積算が終わったら、お客様にご提案して、バトル。
希望予算に収めるため、夢をいくつか諦めてもらうか・・・
予算を上げてもらうか・・・

そこで調整できなかったら、今度は職人方に、費用を抑えるために値引き交渉をする。

厄介なのは、夢の大きさに比例して、金も手間も膨らむこと。
お客様は少しでも安く夢を実現したい。
でも職人さん方に夢を語っても、安くなることは無い。

このジレンマ。
職人方にも、一人一人生活があります。
あっちを立てるとこっちが立たない。
両方建てるには、お客様にお金と工期を頂くしかないのですが・・・
予算が厳しい。

その調整作業は、ドロドロです。

この調整に失敗したり
私が作った積算がいい加減だと
会社が傾きます。
また、良いものが出来上がりません。

建築家の先生とお酒を飲むと、皆・・・
「家を建てる仕事は、表向きは華々しく、中はとことんドロドロ」
と、口をそろえます。

面白い事に・・・
儲けている大手ビルダーや工務店は、お客様の夢を聞きません。
先に自社の商品を夢化して見せる。

「我が社の商品であれば、こんな夢を見れますよ。」

お客様の意見は、聞かないように持っていく。
というより、言えないように持っていく。
ようは・・・
「型にハメる」訳です。(^^;)

なるほど、既成品を夢と見せる事に「金」を使ってる訳ですね。

そうすれば、後はお決まりの物をそのまま建てればいい。
面倒な積算も交渉も段取りも不要。
だから、安く・早く・簡単に出来るのです。
(表向きは全然安くはないのですが・・・)

でも、押し付けられた夢って、味気ないのです。
一番楽しい「自分の夢」は、その家のどこかの引出に一生しまう事となります。

さて、話は戻ります。
楽しい夢の話は一時で終わり・・・
その夢のつづきは、とことん地べたを這うように進んで行きます。

空き地に突然、高さ7mを超える構造物が出来るのです。
建て始めれば、ご近隣に様々なご迷惑をかけます。
様々なお叱りも受けます。
お詫びをして頭を下げ続けるのも仕事です。

現場でも様々な調整が続き・・・
生みの苦しみを、とことん味わいます。

数か月後
泥沼を抜け出すと、夢が形になって現れます。

その時にお客様の喜ぶ姿を生み出すのが、我々ハウスビルダーの仕事だとも言えます。

「平成さんは、儲けてますね~」
最近、色んな所でやたら良く言われます。
えっとですね
基本的に、夢を実現する仕事は、儲かりません。
うちみたいな会社に来るお客様は「夢があるけどお金が無い」という人が中心ですから。
建てれば建てるほど、忙しいだけ。

個人的に、なぜ派手に儲かって見えるのか?
不思議でならないのですが。(苦笑)

「ハウスメーカーのような仕事をしてれば、儲かるよ」
「我々に華々しい事なんて、どこにも無いよ」

と、言ってやりたいところですが、ぐっと我慢して・・・
「そう見えます?」と、強がって見せてます。

今日も新しい夢を聞きました。
とても楽しく聞いた直後から、形にすべく泥沼に潜ってます。
そして数日後、すでに形になった別の夢を引き渡します。

夢から夢へ
人の夢を渡り歩く。

なるほど、そう考えれば派手な仕事なのかな?
夢追い人ですね。

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