「やりたいこと」と「仕事」
40歳を過ぎて、このギャップをとても感じてきています。
仕事一つとっても、本当にやりたいことが全くできていません。
元々、古民家が好きです。
だから、自然で簡素な家に美を感じるのです。
いつか、日本建築を手掛けてみたい。
日本昔話に出てくる土間と囲炉裏のある家を建ててみたい。
というか住んでみたい。
石垣でみた、平屋のあの古民家を建ててみたい。
というか、住んでみたい。
寒いとか・・・
熱いとか・・・
痒いとか・・・
そんなものを超越した空間。
結露・断熱・耐用年数・住宅性能etc・・・
そんなものが気にならない、意匠・造形。
現代は、国が基準を決め、住宅の構造や断熱性を規制しています。
そして、その規制は年々増え続けています。
今年、始まった省エネ住宅ポイント制度は、低炭素住宅や長期優良住宅の仕様を求められます。
複雑化しています。
家に対する自由度がドンドンと狭まくなっているともいえます。
地震が起こるたびに、耐震基準をドンドンと高める。
二酸化炭素排出を抑えるためとして、次世代エネルギーやら、低炭素住宅やらの義務化する。
それには、外皮計算やら、熱損失係数やらで証明することが必要とされ・・・
一棟一棟、その計算をするのにお金を払う。(^^;)
東大出の官僚がやる事ですから、我々高卒の頭では追いつかないのは当たり前と言えば当たり前なのですが、確実に言えることは、官僚方には「寒い家」や「暑い家」は、悪魔の家に見えるようです。
(その前に原発を止めろと言いたいのは山々ですが)
でも、結局、冷暖房機器を使うかどうかは、個人の問題であり・・・
家の性能が良いか悪いかではないのですよね。
人は、快適性を求め始めると、キリが無い生き物なんですよ。
寒ければ寒いなりに厚着をして生活すればよい。
暑ければ窓を開けて風を通して生活すればよい。
しかし、いざ家が暖かくなると、真冬でも家の中で薄着で暮らすようになり・・・
薄着で生活するのが慣れると、寒くなっても着込むことをせずに、暖房に頼るようになります。
都心では、真夏に家を全部閉めきって冷房をかける家が殆どです。これになれると、夜寝るときに冷房を掛けて、逆に寒いから布団をかぶって寝るなんていう人も現れます。
建築界の有識者の中には「日本政府がやっている住宅政策は間違っている」と仰る方が多いのですが、まあ、政策を決めるインテリの方々は聞く耳を持ちません。
2020年を最後に、日本古来の建築物は一切建てられなくなるとも言われています。
それにもまして・・・
首都圏は土地が高い。
この住宅事情では、我々が手に入れられる土地は、30坪が良いところ。
駅徒歩圏内をあきらめても、手が届くのは50坪。
駐車場をとって庭もとってと考えると・・・
上の写真のような平屋を建てることは不可能で・・・
さらに、すぐに隣の家の居間やお風呂という状況。
石垣の家みたいにオープンにしたら、プライベートもへったくれも無くなっちゃいます。
また、御客様の頭の中にあるのは「とにかく安く!」
最初から「1500万円で家を建てて。」というような要望がとても多く、だから、「形」も「仕上げ」も「収まり」も「材料」も、ドンドンと「普通の家」になっていく。
普通とは、コストカットした家のことです。
コストをカットしていくと、家は真四角になります。
間取りは、ありふれた3LDK。
新築マンションの広告に乗っているような100件見ても皆同じというやつです。
外部は、ありきたりなサイディング。
造る側も、つまらない。
住む方も、ときめきが無い。
個人的には・・・
面白い家を建てたい。
住んでいて「ワクワクするような家」を手掛けてみたい。
先日、アットホームウェブで紹介されていた家。
リビングにボルダリングですよ。
やろうと思えば、こんなことが出来るんです。
イイですね。
うらやましい。
なんの変哲もない家。
工夫もない家。
どこにでもある、ありふれた家。
住みたいですか??
一生に一度の物ですよ。
うちの会社は、そっちの方向に特化してみようかしら??
じゃないと・・・
国の規制に辟易する気持ちを個人的に抑えきれない。
安普請な家を建てるのが我慢できない。
だって、そこにかける労力はさほど変わらないのです。
どうせ苦労するなら、コスト削減じゃなくて・・・
創意工夫で、苦労したい。
ビルダーも住む側も満足する家を建てたいんですよ。
どうしようかしら。